「ご苦労。下がってよい」
”剣帝”は事の顛末を子細に報告し、一礼して去っていった。
「…………」
漠然と、窓の外の光景を眺める。
「所詮、あれも人の子か」
感情の一切が読みとれない声。澄んだ瞳だけが、眼下に広がる街の光景を映している。
「少々荷が重かったかも知れぬ」
彼、または彼女もまた、一部始終をその目で見ていた。視覚ではなく、外部にある目。天の光景の一切が彼の目だ。
「悪意の芽、もはやつみとれぬ」
ゆっくりとではあるが、腐食は進むだろう。ゆっくりと、確実に、この内区もまた、浸食されてゆく運命にある。
覆面の占星術師は澄み切った青空に未来を見る。
「今宵は良い月が見える」
吹き込んできた風に身を晒し、マーリンは呟いた。