「ファウスト〜殺戮の堕天使〜」
七章 悪魔の夜
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小高い丘の上。
かつてここで、数百の人間が一度に殺された。今、天空から落ちてくる雨の滴は、あのときと同じように深く大地へ染み込んでゆく。
失った者は二度と戻らない。
消え去った命は、二度と自分の名を口にしない。
けれど。
目の前には、あのとき失ったはずの姿がある。
消えてしまったはずの命がある。
大きな代償の代わりに手に入れた小さな命。
私の大事な宝物。
「サラ」
私は呼びかける。
「私の大切な妹」
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