「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

 悪びれもせず、頭を下げた如月が三度目の同じセリフを述べる。
「まさか快く引き受けてくれた結果、殺されかけるとは思わなかった」
「誠に申し訳ないことをしました。お詫びと言っては何ですが、六道君のお話を聞くだけでなく、彼自身をお貸ししましょう」
「え?」
 ナムは如月を見た。
 如月のほうは自分を見ようともしない。
「彼は優秀です。捜査の助けになるでしょう」
「あの、部長」
 俺の意見は――
「彼のやる気は、先ほどの発言で充分得られたと思います」
 ナムはふっ…とはかなく笑った。
 そうか。
 頼られていい気になっていたほんの5分前の自分を殴りたい。
「六道警部補の噂はかねがね聞いていますよ。日本で第一に作られた特甲隊は毎度国外ニュースで放送されていますから」
「それはどうも」
 どうせろくなものじゃないだろう。
「”クレイジー・マン”と呼ばれている検挙率99%の英雄。民間警察に関わらずその仕事ぶりは同職として尊敬に値する」
「それはどうも」
 言い返す気力もわかない。
「そうですね。それなら――」
 シュトレイマンは腕を組み、少しの時間考えた。
 始業開始のチャイムが鳴る。
 如月は別段何も言わない。
「――いいでしょう。今の件、無かったことにしてもいい」
「ご配慮痛み入ります」
「勘違いしないで頂きたい。彼に手伝って頂くのはもちろんのこと、如月さん、貴方にも手伝って頂きますよ」
 余裕を取り戻したシュトレイマンは、浮かんだ考えに勝利を確信する笑みを浮かべる。
「なんでしょうか」
「奪われた”アガメムノン”の正規の武器一式、奪ったテロリスト相手に裏取引して頂けますか?」
「――――!?」
 ナムは正気を疑った。
「餌で釣る気か」
 冷静にその魂胆を見抜くドク。
「さすがは特甲課の参謀殿。理解が早くて助かります」
 小柄なドクに向け、明らかな軽蔑の眼差しを浮かべる。
 こんなガキに頼らなければならない日本の司法機関は程度が低い、と。

[進む>>]

[<<戻る]

[TOP]

Copyright (C) 2010 Sesyuu Fujita All rights reserved.