「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

「悪かったな。穂ノ原、もう戻っていい」
 きゅうすを渡して去るように指示すると、
「穂ノ原君」
 如月が呼び止める。
「ここにいたまえ」
 とんでもないことを口にする。
「部長、何の冗談ですか?」
「私は冗談を言わない」
「ごもっとも」
 返事をしたシュトレイマンに鋭い目をやる。
「彼女は関係者だ」
「部長、本当ですか?」
「疑い深い人間だね、六道警部補殿」
 いちいちかんに障る皮肉は言語外にカット。
「そうだ」
 如月の言葉に呆然とする。
「ほえ?」
 穂ノ原は自分の事だと気づかない様子できゅうすをもって突っ立ったままでいる。
 再びガチャリと扉が開くと、今度はドクが入ってきた。後ろにいるのは、ガリとブッチョの二人組。
「行き場がないそうだ」
「丁重に追い出せ」
 ナムの即答にドクは振り向き、「達者でな」と言った。
「鬼!」
「お嬢様に言いつけてやるでゲス!」
「お前ら、そんなことしてる前に仕事を探せ。特にデブのほう」
「あちきの仕事はクリエイティブオンリーでヤンス!」
「ファッキュー!」と言って去っていくデブ。
 追いかけるヤセ。
「立て込んでいるなら外にいるが」
 執務室の雰囲気をみて、ドクが気を利かせる。
「いや、この際だ。六道君に話すなら、君にも話しておくべきだろう」
「ふむ」
 入ってくると、扉をピタリと閉める。
 ナム、如月、シュトレイマン、ドク、穂ノ原の5人が部屋に残る。
「如月さんは、部下にも真実を話していないわけだ」
 またいやな笑い方をするシュトレイマンを、如月は眼鏡の奥から見つめた。
「理由はそちらのほうがご明白だろう」
 如月はそう言うと、もはやいつもの調子に戻り、冷静な声で穂ノ原を呼び、後ろに立たせた。
 シュトレイマンがコホン、とわざとらしく咳払いする。

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