「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
――ちゅっちゅーちゅらちゅら! ヘイヘイっ! むちゅうなのっこのと・き・め・きっがー 凍り付くナム。 音楽は鳴り止まず、続きの歌詞をそこら中に披露して衆目の失笑を浴びる。 慌てて引き出し、通話ボタンをプッシュ。 「誰だ! こんな時間に――」 「私だ」 再び固まるナム。 「――ナゼ如月部長が、この番号を」 「なにか問題があるかね」 「いえ」 怖ろしい男。如月恭二。 ナムはそこらに監視カメラがあるのではないかと辺りを見渡してしまった。 「明日の朝だが、悪いがまた早めに出社して貰いたい」 「またですか?」 「そうだ。頼む――ツー…ツー……」 また一方的に言われて切断された。 ナムは疲れたようにため息を吐き、携帯端末をしまった。 その途中で引き戻し、電源ボタンを探し出して繋がらないようにしておく。 「あのデブ。次に会ったときには本気で豚箱に入れてやる」 密かにとばっちりが確定する。 「どちら様からですかー?」 「部長だ。明日、早めに出社を――」 穂ノ原の顔を見て、言葉を止める。 「どうかしました−?」 そう言えば、穂ノ原を連れてきたのは如月部長だったことを思い出す。 「――いや、なんでもない」 ついでに、今夜中にやりきらねばならない書類仕事も思い出し、今日も夢は見れないな、とげんなりした。 |