「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

「……眠らなければいつ疲れをとるんだよ」
「ホノは疲れないですよ。いつでもやる気満々です!」
「タフマンだろうがアリナミンだろうが、滋養強壮剤を使おうが人間には限界ってものがあるんだよ。そのために、夜――夜勤なら昼だが、眠って疲れをとる必要がある。明日に備えて英気を養うんだ」
「英気――栄養剤の注射時間ですか? それならホノにもあります。午前二時から四時までがその時間です。確かにその間、意識を失います」
「短いな。睡眠が二時間って」
「起きたらおめめパッチリですよ。今日も一日ガンバです!」
「いや、朝からそんなにテンション高くても困るが」
 寝起きはナムにとって最大の天敵だった。
 対処方法としてコーヒーは必須のアイテムだ。
「みゅみゅちゃんはいまおねむなのですね。だから目が覚めないのですか」
「今頃、夢でも見ているんだろうな」
「ユメって何ですか?」
「おい」
 瞬間的に疲労が増した。
「いい加減にしろ」
「ユメという単語は聞いたことがあります。けど人によって発言がまちまちで、ホノにはよく理解できません。ユメとは複数形の単語ですか? 恐いものですか? それとも楽しいもの? 課長はユメをみますか?」
「当たり前だ。今朝も――」
 夢を、見た。
 昔の自分を。
 疑うべくもなく正義を信じ、誇りを持って星条旗に信仰を捧げていた時代。あの頃の自分が、今のこの姿を見ればどう思うだろう。
 隣にいた隊長は、あのときと同じ言葉を話すのだろうか。
 久しく忘れていた感情がぶり返し、シュトレイマンに対してあれほど露骨な態度を取るきっかけになったのは間違いないだろう。
 後悔。
 その一念は、まだこの身のうちにくすぶっている。
「――見たくは、なかったがな」
「課長にとってユメは見たくないものですか?」
「見たくなくても見なきゃならん。寝ているせいで逃げることも出来ん。ただ見ているだけしかできないのは、歯がゆいことだ。ならば好きな夢を見れたなら、幸せなのかも知れんが」
 一端言葉を切り、「いや」と付け加える。
「それもどうだろうな。どちらだろうと夢は夢だ。目が覚めたなら消えてなくなる。現実を直視しなければならない分、幸せな夢のほうが酷かもな。現実は、夢のように都合良くはいかないもんだ」
「ユメを見るにはどうしたらいいですか?」

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