「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

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 疲れていたのだろう。
 みゅみゅはナムの背中でくうくうと寝息を立てていた。
 どうやら穂ノ原と一緒に買い物に出ていたようで、その途中に事故に巻き込まれかけたようだ。荷物がないところを見ると、特に良い品物は見繕えなかったらしい。
 ウインドウショッピングというのも暇つぶしにはよいのかもしれない。
「ご苦労だったな。穂ノ原」
 ナムは部下にねぎらいの言葉を掛けた。
「当然のことをしたまでです!」
 胸を張る部下に苦笑する。
「本来なら、オフィスの外へ出ないでいて欲しかったんだが」
「ほえ? そうだったんですか?」
「……いい。説明するってことがどれだけ重要か悟った」
 一緒についてくるはずだったガリは、途中で離ればなれになったブッチョを探しに行っている。最初に電話を掛けてきたのが彼で、そのとき口論になったことを謝りたいそうだ。
「本当のことを言ってすまなかったでゲス」
 そっちのほうが傷つくと思うのだが、本人が是非にと言うことを止めるのも悪かろう。その一言からさらに二人の関係にヒビが入ったとしても、当方としてはノー・タッチだ。
 肉離れをおこした足で去っていくその背中に乾杯。早く病院行けよ。
「なんだかんだいいながら、あいつらも仲がいいモンだ」
「まるで課長とセイレンさんみたいですよねー」
「……どっちが俺でどっちがドクか詳しく聞きたい」
「そんなー。わたしの口から言えないですよー」
「君が言ったんだよね。十秒も経ってないよね。もしかして君の両親はニワトリかな?」
「アイスクリームですか? おいしかったですよ」
 こうも会話がかみ合わないと妥協という選択肢しか無くなる。
「……なにを食べた」
「クランベリーチーズとチョコチップミントとオレンジシャーベットです」
「そう、良かったね」
「おいしかったですよー。あんなふわふわでしゃりしゃりでひんやりした甘くておいしいもの、はじめて食べました」
「そう、良かったね」
 答えた後、ナムは驚いて足を止めた。
「はじめて? 食べた?」
「はい!」
 ナムは唖然とした。社会人になるまで一度もアイスクリームを食べたことがないということが、つまりどういう事か考えてみる。
「……苦労したんだな、穂ノ原」
「?」

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