「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
「小僧どもがナニ喧嘩してやがる」 「なんだと?」 権之進の振り向いた先で、ベレー帽をかぶったシワだらけの顔がニカッ、と笑う。 「これは――前園警部」 ナムは姿勢をただし、折り目正しく一礼する。 「おう」 片手をあげる老刑事。 「お疲れ様です、ゾノさん。調書、終わったんですね?」 権之進も丁寧な口ぶりで尋ねる。 「ああ、こいつのはな」 「お嬢様!」 その後ろからひょこひょこと足を引きずりながらガリが歩いてくる。 「お前もいたのか」 ナムは今更気づいたように言った。 「居ちゃ悪いでゲスか!」 「悪くはないがどうでもいい」 言葉をなくすガリを無視し、公職上の先輩に尋ねる。 「何の調書を?」 「お前の部下のやらかしたことだよ」 「部下? 穂ノ原がなにか?」 「なぁ」 と言って、前園警部が後ろを振り向くと、おどおどと落ち着かない態度で老刑事の背後に隠れようとする男がいた。 「そいつは?」 「銀行強盗だ。ATM専門のな」 前園は振り返ってごんっ、と硬い拳で頭を弾いた。情けない顔をして、男が頭を押さえる。 「常習犯ですか?」 「ああ、指名手配していた」 首根っこを掴み、前に引きずり出す。 目を会わせようともせず、きょろきょろと上下左右にめまぐるしく動かす男。まるで目玉だけが別の生き物のような奴だ。 「藪川大二郎。前科14犯だ」 「大物ですね」 「そうだな。お前の部下に礼を言っておいてくれ」 ナムは穂ノ原をみて、ニコニコと微笑むその姿にどうも違和感を覚える。 しかし男が穂ノ原をみつけるなり、途端にそら怖ろしげな表情を浮かべて後ずさったのをみて、本当らしいと納得せざるを得なくなる。 「おまえ、なにしたんだ?」 尋ねたところ、穂ノ原は手をグーで固めた。 「ぶっ飛ばしました」 |