「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
負けじと押し返す。 「俺は穂ノ原さんに用事があるんだ。てめぇは引っ込めモンキー」 「俺もお前になんぞ用はない。俺は”ホノちゃん”に用事があるんだ」 「何親しげにニックネームで読んでやがる。俺の未来の嫁さんを」 「ツラ見て物言えこのイワオ。東京タワーにでものぼって吠えてろクソゴリラ」 「ああん!?」 「やるかコラ」 「ケンカは駄目ですよー」 「はい!」 急に相手がいなくなり、たたらを踏むナム。 「そうだよねぇ。ケンカは駄目だよねぇ。人間仲が良いのが一番!」 「ですよねー」 「ねー」と向かい合って頷きあう二人。 「この馬鹿殴りてえ」 「駄目ですわっナム様! ここは警察ですの!」 拳を固めたナムにすがりつき、小さな体で押しとめるいたいけな少女。 「ああ、そういやぁ聞いたぜ」 権之進がとてもいやらしい顔で振り向いた。その頬にカウンターを叩き込める絶好のチャンスだったのに、みゅみゅが一生懸命邪魔をして手をだせない。 「ご結婚おめでとう。六道警部補殿」 「はァ? 何いってる?」 「ぽ」 自分のすぐ下で頬を染める少女。 「…………言ったのか」 「いえ。私は恥ずかしくて……その、ホノちゃんが……」 ナムは触れれば切れそなカミソリのような鋭い視線で穂ノ原を睨んだ。 「お目出度いことって、つい人に話したくなりますよねー」 まったく意に介さない新米社員。 自分は本当にこの娘の上司なんだろうか、と、つくづく疑問に思う。上司を敬う心遣い、古き良き日本の文化はどこへ行った。 「この犯罪者め」 「貴様にだけは言われたくない。というか、俺は承諾した覚えはない」 「そんなナム様! みゅみゅとは遊びでしたの!」 「……TPOを考えて、その言葉を喋ってもらいたいんだが」 署内全員からの視線が 「ふはははは。そういうわけでな。俺は貴様を今すぐしょっ引くことさえ可能だ」 「俺の意見は無視かい」 「犯罪者なんぞに耳を貸す馬鹿がどこにいる」 「……どこに犯罪者がいるってんだ」 「言わずもがななことを俺に言わせる気か?」 その上から目線がムカつくんだよ。とナムは思った。 |