「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

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――ちゅっちゅーちゅらちゅら! ヘイヘイっ! むちゅうなのっこのと・き・め・きっがー

「はい、もすもす」
 恥ずかしくなるくらいの大音量で鳴った携帯端末を手に取ったデブを、ナムは怒りを通り越して呆れた目で見た。
「おまえ、捕まっているという自覚ないだろ」
 男二人でのみゅみゅを探して夜の散策。その片割れの腕には、いまだ手錠が巻きついたままだった。そのありさまで両手に携帯端末を持ち、器用に耳に当てる。会社帰りの連中が、得体のしれないものでもみつけたようにデブをみていた。
「ナムサンでヤンスか? いるでヤンスよ。……よく聞き取れないでヤンス。落ち着くでヤンス。……なんでヤンスかその言いようは! あちきは太ってないでヤンス! ファッキュー!」
 切断するデブ。
「誰からだ?」
「いたずら電話でヤンス」
「……よくそんなあからさまなウソがつけるな」
 もう一度かかってきた。
 デブが切断しようとしたのを素早く掠め取る。
「はい。こちら六道ナム」
『ナム様!?』
 驚きの声から察するに、みゅみゅのようだ。
『なぜナム様が……私、電話番号を間違えまして?』
「いや。俺は電話を持ち歩かん主義だ。横のデブから借りた」
「返すでヤンス! あちきのでヤンス!」
 うっとうしく絡んでくるのを腕一本で引き剥がし、流れるような動作で足払いをかける。
 ごろんと転がり、アスファルトに後頭部を打ち付けてもだえるデブ。
「どうした?」
『そのっ! 大変ですのっ! ホノちゃんが――』
「穂ノ原が?」
『そうですの! 大変なんですの!』
「どこにいる?」
『警察ですわ! えっと、その、ここは――』
「近くか?」
「はい!」
 この辺りからそう遠くない警察署と言えば――
「新宿署か!」
 地を蹴る。

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