「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
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「なんですの! あなたは私のしつけに文句をつけるんですの!」 近頃の青少年は凶暴さを増している。 ニュースで見た話を、彼は実感として理解した。 「ガリは北斗家の執事ですのよ! 貴方がいうほどヤワじゃありませんわ!」 「…ヤワでゲス」 主の耳には届かない。 「も、もう夜だよ。こんな時間に君みたいな子が外を出歩いてはいけないんだ」 「やっぱりナンパ!?」 ひゅるっ、とブレスレットが鎌首をもたげた。 「貞操の危機!」 「ひ」 身の危険を察知した巡査は、一歩、二歩、三歩……十歩ほど後ずさりした。 「い、今すぐ武器をしまいなさい!!」 「まだ射程内ですわ!」 さらに十歩くらい下がる。 「うわっ!」 転がっていた荷物に蹴躓く。 「まぁっ! なんてことを!」 つぶれた箱の中から出てきたのは、そろいで用意された陶器のマグカップであった。 粉々に割れていた。 「許せませんわ! ナム様と私のらぶらぶ用品を!」 「あー、だから全部二つずつ同じもの買ってたんですねー」 「おかげで持つほうは二倍の労力でゲス」 荷物を拾い集めていたガリが、割れた原因が自分のせいとばれなかったことにわずかに表情を緩ませる。 「そこっ!」 びしっ、と飛んだムチがガリを直撃した。 「ぎええ!!」 「ひい!」 怯える巡査。 「ガリが落とすからいけないのですわ!」 横暴な主君であった。 巡査は逃げた。 「待ちなさい!」 立場が逆である。 凶悪犯の逮捕に協力してもらおうと、巡査は同僚に助けを呼ぶ。 「き、緊急事態――」 『緊急事態発生! 新宿区にいる警官の応援求む! いや、特甲課に連絡しろ! 場所は――』 「え?」 通信がノイズに変わる。 |