「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

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 同時刻。
 一見仲のよさそうな姉妹が並んでアイスクリームを片手に、小滝橋通りを抜けて歌舞伎町方面へと歩いていた。ともに3段がさねのワッフルコーン6種別のキングサイズで、堂々と食べ歩きをしながら歩道の真ん中を悠々と進んでいる。
「おいしいですわ!」
 満面の笑みを浮かべた妹のほうが言った。
「そうですねー」
 姉のほうも頷く。
 彼女らの後方――それもかなり遅れた位置に、かろうじてバランス保って歩く包装紙の山が、あっちにおたおたこっちにおたおた、見ているほうがヒヤヒヤするほど素人の曲芸を見せている。
「ま、待ってほしいでゲス!」
 離れた距離のため、主人の耳には届かなかった。
 穂ノ原が気づく。
「待って欲しいって言ってます」
 少女――みゅみゅは立ち止まると、はるか後方でバランスを崩して荷物の雪崩に巻き込まれた部下が見えた。
「何してますの! せっかく買った服が汚れるじゃありませんの!」
「ひどい……とても一人で持てる量じゃないでゲス」
 通り過ぎていく通行人が哀れみの一瞥を投げて、そそくさと離れていく。
「女の買い物はおかしいでゲス」
 聞こえないように呟いたつもりが、穂ノ原がそっくりそのまま主人に伝えた。
 びゅるん、とムチが飛んでくる。
 寸分たがわずガリに命中。
「ぎええ!!」
「陰口なんて許せませんの!」
 少女の腕から伸びた長いムチは、戻ってくるとき宙でくるくるとぐろを巻き、するりと手首に巻き付いた。
 何の変哲もない銀色のブレスレットだ。
「すごいですねー! それ、なんていう武器なんですか?」
 穂ノ原がものめずらしげに聞いてくるのに、得意げに答える。
「お父様からプレゼントされましたの! ボタン一つで20アンペアの電撃も流すことが出来ますのよ!」
「へー。すごいです! 20Aって、だいたいの生物は死んじゃいますよね!」
「特殊な技術を応用した護身用の武器ですの! 痴漢撃退スプレー代わりにって、お誕生日にくださったのですわ!」
 手首に巻き付く凶器を誇らしげに自慢したあと、その矛先を歩道で悶える部下にむける。
「ガリ! 早くしないともう一度ですわ!」

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