「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

「ま、待つでヤンス! 嬢がどこに言ったか言うでヤンス! この年齢で前科もちになりたくないでヤンス!」
「それとこれと話は別だが、聞いてやる」
「話がわかる人でよかったでヤンス」
 話のわかっていないデブは、椅子に座りなおすとポケットから出してきた手ぬぐいでふきふきと顔面の汗を拭いた。
 ステッキをもった女の子の柄が見えた気がしたが、これ以上突っ込むことは無駄な努力だ。
「嬢は出ていったでヤンス」
「どこへだ」
「外へでヤンス」
「どこへだ」
「さぁ。知らないでヤンス」
「…………」
 ナムはデスクの上にあったラクガキの一枚をつかむと、見やすいように目の前に下げてびりびりと破いてやった。
「ああーー!! なんてひどい事をするでヤンス! 著作権侵害でヤンス!」
「著作権侵害とは、他人の作品を無断で流用することだ。破いた場合は器物破損だばかもの」
「訴えるでヤンス! 裁判で有罪にするでヤンス!」
「黙れ犯罪者」
 手錠をつけたまま、ぎゃーぎゃー騒ぐデブを最寄の交番まで預けにいくことにする。
「有罪ならすでに確定している」
「話したのにーー!! ちゃんと話したのにーー!!」
「実のない話は話したとはいわん」
 泣き叫ぶデブを連れ、ナムはオフィスを後にした。

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