「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

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「ん? あれ? 穂ノ原はどこ行った?」
 オフィスに戻ってきたナムは、きょろきょろと見回した。本当のところは穂ノ原よりも、それに預けていた女の子に用がある。19:00は子供が家に帰って寝る時間だ。
 目に付いたのは、内勤の社員数名とそれに囲まれて得意そうなデブが一人。
「何やってる」
「あ、これは旦那」
 汗だくのデブが振り返る。
「旦那じゃない」
「お嬢様の婿になるお人でヤンしょ」
「誰がだ」
 近づいてみると、デブは机の上で社内プリント用の裏紙になにかを書き込んでいるところだった。
「なんだそれは?」
 ついてきたドクがその一枚を手にとる。
「ふむ。よく描けている」
 紙に繊細なラインで描かれたメガネのメイドキャラ。
「なんだ、ラクガキか」
「アートでヤンス!」
「しかしデッサンの才能がないな。等身に比例して胸の肉付きと腰まわりのバランスがおかしい」
「そんなことないでヤンス! これが黄金比でヤンス!」
 デブはドクから紙をひったくると、大事そうに胸元に隠した。
「顔の表面積に比べて目が半分を占めているのは、普通ならたいした妖怪ではないか」
「むきー!」
「何を怒っているのか、このデブは」
「そんなことより」
「そんなことないでヤンス!」
「そのお嬢様はどうした?」
「あちきの才能を認めないトンチキに教えることは何もないでヤンス」
「ほう」
 先ほどの一件で気の立っているナムは、我知らず懐のグリップを握りしめた。
「矢でも鉄砲でも持ってきたって口を割らないでヤンス」
 ドクが何かを期待している目で見上げてくる。
「スゴイです!」
 感嘆の言葉が行動をさえぎる。
 帰宅用の私服に着替えてきた本郷が、デブが隠しているのとは別の一枚を取り、しげしげと絵を見つめている。
 チャイナドレスを着て銃を持った女の子の絵だ。
「とても可愛い!」

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