「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
「あそこがいい」 と言って、指をさした先には、けばけばしく文字が躍るラブホテルだった。 「今夜はあそこに泊まる」 「部屋は――」 「一つに決まっている」 「――わかりました」 携帯型の小型PCを取り出すと、イヤホンジャックに取り付ける。看板から見えた文字で検索をかけて地図を割り出すと、表示された電話番号を打ち込んでENTER。3回のコールでつながる。 イヤホンマイクで声をかける。 「予約をお願いします」 「無粋な真似をするね」 またくつくつと笑いを漏らし、イヤホンジャックを抜き去る。 1980年代風のレゲエに、なまめかしい女の声をサンプリングしたBGMがこぼれてきた。 女性が頬を染める。 「切れ」 命令されて、通話を確認している声を無視してPCの電源をOFFにする。 「ああいったところは、飛び込みでいくものだ」 女性の腰を掴むと、強引に立ち上がらせる。 「明日は早い。今日は早くからベッドに入るとしよう」 顔を伏せた部下に対し、シュトレイマンはその白い首筋に唇を寄せた。 |