「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
/ 9 / 「嫌われていますね」 後ろから掛けられた声に、微笑を歪ませる。 「公安が好かれる国は腐敗している」 「敵の敵は味方だと思いますが」 「自覚していないからな」 内ポケットからシガレットケースを取り出し、煙草を一本取り出すと口につける。 「所内は禁煙です」 「外だ」 「私有地です」 肩をすくめ、それでも 赤いともし火から煙が上がる。 「僕のことはシュトレイマンと呼ぶように」 「はい。CEO」 「ノーだ。シュトレイマン」 現れた女性に注意し、ついてくるように指示する。 「何か掴んだか?」 「はい。いくつか」 「OK。場所を移そう」 肩を並べて歩く。 美男美女の取り合わせは嫌が応にも人目を引く。どちらも目立たぬ色のスーツを着ているのに、モデル並のスタイルと、夜の月に映えるような顔が道行くものを振り向かせずにおかない。男性は道行く女の視線を、女性はすれ違う男の視線を、連れ合いから奪ってはそ知らぬ顔で通り過ぎていく。 「 皮肉に口元をゆがめる様が、彼には最も似合う。 「煙草をすっておられることに注意が向けられているのかと」 「ふん。狭量な国だ」 足元に放り投げ、踏み潰す。 彼らは人気のない公園にたどり着くと、空いていたベンチに腰をかけた。 出来すぎたカップルに見える。 女性は脇に抱えていたブックファイルを差し出す。 それを開き、 「 「文字はいまだ廃れてはいません。文明の利器に頼りすぎるのは、CEOの悪いところです」 「厳しいね」 ふと気づいて、 「シュトレイマンだ」と注意する。 「申し訳ございません。シュトレイマン」 |