「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

「ガソリンエンジンは馬力が強いな」
「カスタムかけてあるのだろう」
「行ってくる」
 コートを翻し、駆け出す。
 残されたドクはミニパトに備え付けられた有線の無線機を掴み、『ナイト』11番機の搭乗者に向けて声を掛けた。
「柏原、今、ナムが向かった。援護しろ」
 何か悪態をつかれた気がしたが、ぶちりと回線を切り、あとのことはナムに任せる。
 こちらへ逃げてくるピンク色の筐体に向け、ナムは銃を構えた。
――隊長なら、一撃で仕留める。
 深く息を吸い込み、足の関節部分を狙って引き金を引く。
 衝撃が肩を襲う。
 だが、倒れない。
「くそ」
 右膝を集中的に狙い、引き金を引く。
 三発撃ったところで、『カーミラ』の膝をつなぐケーブルが損傷し、動かない右足のせいでバランスを崩した巨体が倒れてきた。
 真上に。
 走る。
 スライディングで滑り込むと、壊した右足にぶつけて身を伏せる。
 ずうん、と倒れる音。
 ガキン、と頭上で音が鳴る。
 一本だけ太いケーブルが金属の上肢と下肢を繋ぎ、数トンの重みが落ちてくるのを防いでくれた。
「シートベルトを締めていて助かったな」
 地面すれすれで青ざめた顔に向け、ナムは銀色に光る手錠を差し出した。

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