「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

「一人残らずだ。でなければ、俺たちが軍法会議にかけられて極刑をくだされかねん」
「Yes,Sir」
 フレドが即応する。
「――Yes,Sir」迷ったのは一瞬だった。
「奴らは一度戦場から逃亡している。一週間とはいえ、最後まで実践を生き残った我らの敵ではない。いいな、殲滅しろ。証拠を残すな」
「「Yes,Sir」」
「陽動は俺がする。フレドは援護しろ。こちらの正確な数を悟られるな」
「了解」
「隊長、自分は何を?」
「お前は何をしに戻ってきた」
 問われた言葉にやるべき事に気づく。
「――見張るなら、一ヶ所に集めているはずです。俺たちが陣を張っていた場所なら丁度いい」
「及第点だ。敵兵に見つかるな。目的を悟られないうちに仕留める。速度優先だ」
 隊長はAK47のロックを解除しつつ、笑みを刻んだ。
「お前の我が儘に付き合うのも骨が折れる」
 薄く笑う隊長の眼を見返し、「Yes,Sir!」力強い言葉で答えた。
「正義は我にあり」
 フレドが笑った。

 ミニパトのドアをひらき、外へ出る。
 風が気持ちよかった。
 春先にもかかわらず、羽織った合皮製のロングコートがばたばたと春風に吹かれる。
 S&W M500ハンターMRを、胸に巻いた肩ベルト型のホルスターから引き抜く。コートを着ているのは、このデカブツをあからさまに外へ見せないための包装だ。戦場を出てから今日まで、片時も離したことはない。、
「ナム。来たぞ」
 証券取引サイトから、近隣地図へと表示を変えたドクの携帯型ハンドPC。画面に示された赤い点は、衛星通信を用いて識別された犯罪Dzoidの現在地だろう。
 というより、すでに視認可能な位置にいる。後続の白黒パンダのDzoidから両足を使って必死に逃げてきている。
 タイプ『カーミラ』。ピンク色の派手なデザインだ。初めて人と同じ5本指を用いた多関節駆動可能な汎用作業機種として発売されたものの、現在ではもはや目新しい機構ではなくなっており、次々新作もリリースされているのでちまたで見かけるのは珍しい。
「ドク、あれのエネルギー核はなんだ?」
 シリンダーを振り出し、弾倉の弾丸を確認。五発フルのFMJ。
 すべて抜き去り、対Dzoid用の鉄鋼弾へ変える。
 キーボードを叩き、サプライズのDzデータベースから情報を引き出すドク。今まで公式発表された機種なら、他社のものも含め詳細を知ることが可能だ。
 出てきた情報を見て、眉間にしわが寄る。

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