「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

「味方ではない」
「は? しかしあの軍服は――」
「一番、厄介な相手だ」
 隊長が普段、遠回しに何かを言うことはまずない。部隊長の迷い言は部隊全般に、不安感と不信感をもたらす。ゆえに、必然的に決定的な言葉しか口にすることはない。
 にもかかわらず、今は歯切れが悪い。
 言いたくないことなのだと、見て取れた。
「どうします? 本隊に通報しますか」
 フレドが小声で耳打ちする。奴らが何者かが分かったような口ぶりだった。
 悲鳴が聞こえた。
 態勢を低く保ち、村のほうへ目をやる。
 中央の広場はここからでもよく見えた。
 数人の兵士がへらへらと笑いながら、一人の女を引きずってきた。
 着ている服はボロボロで、髪も乱れていた。
 フレドが呻く。
「あいつら――」
 半裸に近い女性を取り囲む数人の男たち。
 見ている間に行われた行為に、一気に頭に血がのぼった。
「隊長、奴らは我らの面汚しです」
 口汚くののしる彼に、隊長は「押さえろ」と命じた。
「俺たちの目的は索敵だ。見て見ぬ振りをすることもできる」
「彼女には面識があります」
 この一週間の間、頭の片隅から離れないでいた。
 村を去る前、最後に遊んだあの子の母親だ。
「助けることは必然です」
「作戦にとっては必然ではない」
「なぜ隊長は冷静でいられるんですか!」
「声を落とせ」
 鋭い声。
「思考を感情にゆだねるな」
 怖ろしく冷たい声だった。
 作戦に入る前に、よく隊長はこのような雰囲気を身に纏う。
「リクドー、我々の目的はなんだ」
「――索敵です」
「そうだ。この人数で、それ以外の行動に余力を割ける余裕はない」
「分かっています」
「分かってはいるが、理解していない。相手の数が不明だ。生存者の数も不明。相手方の保有装備、敵の指揮官、成功率もな。事に当たるには決定的な情報が不足している」
「隊長!」
 固い声でフレドが呼び掛け、広場のほうへ注目するようジェスチャーする。
 男たちがまた別の一人を連れてきた。

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