「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

 彼は少し蒼い顔をしていた。
「気分は悪いですよ」
 正直に告げる。
「……そのようだ、な。だが、本隊の奴らに比べてはお前は気丈だ。ずいぶん余裕に部隊の作戦について行っている。きれい好きなジャパニーズなら、余計こう言うのをみると気が触れると思っていたが」
「とっくに気が触れているのかもしれません」
「はは。それなら気が触れてくれていたほうが、俺たちもやりやすい」
 当然、吐いたりはしている。
 ただ、数が少ないだけだ。
 自分は特殊ではないのだ。
 珍しがられる必要もない。
「……この分では、巻き込まれているな」
 前を行く隊長の呟きに、どこかへ飛ばしていた心が戻ってきた。
 ずん、と重くのし掛かる。
「無事ではないだろう。覚悟しておけ」
 これは、作戦の一部ではあった。
 小競り合いのあと、敵部隊の動向を探るための索敵部隊。隊長と、自分と、フレド。僅か3人での任務。可能な限り見つからないよう、索敵して情報を集める。
 あの村を経由していってはどうでしょうか。
 ずっと気になっていたことを、ルート選別の議題に示したところ、隊長はあっさり了解した。
 僅かな望みを頼りにたった7日の温情がある村へと急ぐ。その道行きで、僅かな望みは限りなく絶望へと近づいていった。
「これは――」
 辿り着いた。
 予想通り、目にした場所はすでに村としての形を留めてはいなかった。
 彼らはやはり、土地を離れていなかった。
「伏せろ」
 短い命令に即時従う。
 近くの大きな塀の影に揃って身を寄せる。
「隊長、奴ら――」
 崩れ落ちた家屋のそこかしこにたむろする見慣れた軍服。
「敵兵には見えんな」
 冷静な声が返ってくる。
「何言っているんです!」
「本隊からはぐれた部隊でしょうか」
 フレドの言葉に、
「おそらく違う」
 確信じみた声。
「味方なら、別に構わないのでは」

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