「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
何日も逗留していると、そのうち村人とも言葉を交わすようになる。 いつの間にか、自分の周りには暇をもてあました子供たちが寄りつくようになっていた。 外国人が珍しいらしい。 「子供に好かれるな」 リッグがそう言って茶化した。隊長と同じミネソタ生まれで、二人でよく故郷の話しで談笑を交わしていた。ミシシッピは堤防老朽化による水難騒動や、友達のインディアンに貰ったアクセサリだのを自慢する。彼は偏見というものに相当無頓着な人間で、誰にも好かれていた。 「同じような精神年齢だからだろう」 フレッドが銃の手入れをしながら声を掛けてくる。フレッドは狙撃のスペシャリストだった。1kmも先にある空き缶を一発で当てたときには、小隊全員が彼に缶づめ一杯の1ドル紙幣をプレゼントした。実力は折り紙付きだが、少し無愛想な感があることから子供たちにはすこぶる人気が悪い。 「ひどいですね」 「子供に好かれるのはいいことさ。疲れた心が癒される」 リッグは片腕を失くしていた。 「余計に疲れますけどね」 「それでもいいのさ。子供たちに好かれるのは、心まで荒んでいない証拠なのだよ」 「そうなんですか?」 「嘘に決まってるだろう。 フレッドが銃の手入れを止めて注意する。 分解している銃はヘッド・ショット社製リニアレールガンだった。複雑な構造で、アマチュアがバラせば二度と元に戻せないといわれている。怖ろしく長い銃身は、摩擦係数ゼロ空間で可能な限り加速を得るためにあり、この長さによって初速が決まる。弾倉はマガジンタイプ、著しい貫通力をマンストッピング時に有効化するための特殊な専用弾を用いる。その特性上、狙撃銃としての用途が多く、撃発自体のしくみは汎用狙撃銃と大差はない。 フレドは毎日、この銃を手入れをかかさない。細かく分解し、銃筒に新しくグリスをぬる。いわく、自分の銃を一日一度は中身をいじることを教官に叩き込まれた癖らしい。 「お前のところに来ないからって、いじけるなよフレッド」 「ふん。ガキは嫌いなんだ」 そのやりとりを、少し離れて隊長が僅かに笑う。 白髪交じりの銀髪が風に揺れる。 寡黙な人だったが、口を開けば必ず的確な指示や部隊を勇気づける言葉をくれた。75部隊の小隊一つを任されるだけの気概があり、なにより部下からの信頼が篤い。彼の下にいる限り、自分たちの正義が崩れることはないと確信させてくれる、そんな不思議な魅力があった。 目の前にボールが突き出されてきた。 仲良くなるためにあげたジャパニーズの紙風船だ。暇つぶしのシャドーボクシング用に持ってきたものだったが、子供たちにはウケがいい。 |