「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

――いかん。
 今は自分が部隊を率いるリーダーなのだ。
 気を静めるため深く息を吸い込み、スローに吐き出す。
「結局、六道さんからお話は聞けませんでした」
「話すことなどない」
 吐き捨てる彼に、如月は冷たい目をやる。
「そうですか」
 始業開始のチャイムが鳴る。
 六道はその音を聞くと、シュトレイマンに目も向けず特7課のオフィスに向かった。
 戸口に集まっている社員に荒々しい声を掛ける。
「ミーティングを始めるぞ」
「まだ、聞きたいことが聞けていないのですが――」
 追いかけようとしたシュトレイマンの前に、如月が進み出て告げた。
「始業時間です。お話は、勤務時間外にお願いしたい」
「そうですか」
 おとなしく引き下がるシュトレイマン。
「ご協力、痛み入ります」
 皮肉ともとれるセリフを告げ、「ミーティングが終わるまで、こちらで待機していてください」と自分も課長室を後にする。
 誰もいなくなったのを見計らい、シュトレイマンはどかりと無遠慮にソファへ座り込んだ。掴まれて歪んだネクタイをさらに引っ張り上げながら、呟く。
「隊長、ね」
 くつくつ。
 堪えきれない笑みを、誰もいない部屋に漏らした。

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