「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
「この男の名前だ」 「知らないのですか?」 「答えろ」 横柄な態度に気分が悪くなる。 半眼になるナム。 「どういう事だ」 「我々はこの男を追っている」 FBIが追っている? 視線を下ろし、写真の男を見る。群衆の中で、その男だけしか目に入らない。 「彼が何をしたと」 「知っているのか知らないのか」 「知るか」 「嘘をつくな」 「何をした?」 「テロリストだ」 「テロ――馬鹿な!」 吐き捨てる。 「知っていることを正直に答えろ。出なければ地球の裏側まで同行してもらう」 「ふざけるな。ここは日本だぞ」 「我々は国家反逆者を追っている。手段など選んでいる暇はない」 強い視線が二人の間で交わされる。 「社内では穏便に願いたい」 如月の冷静な声に、二人の熱が少しだけ冷める。 「穂ノ原君、セイレン君」 立ち上がる。 「込み入った話のようだ。外に出るように」 「ご協力感謝します」 シュトレイマンが形ばかりの頭を下げる。 「六道君、始業時間までには終わらせるように」 如月は二人を引き連れ、課長室から出る。 「邪魔者がいなくなり、話しやすくなりましたね」 「話すことなど何もない」 「君の上長の許可も頂いていた。何も遠慮することなどありませんよ」 「だからどうした」 「君も頑固な男だな」 「そうさせているのはあんただろう」 シュトレイマンは肩をすくめると、また写真をコンコン、と叩いた。 「この男は、半年前から起きているDz連続爆破事件の首謀者と見られている。組織の名はカムイ。この男自身も”カムイ”。コードネームだろう。奴らは宣言した場所のDzを標的に爆薬を仕掛ける破壊行為を繰り返し、今日時点で被害は二桁を超えている。そのどれもが、Dz関連の企業か関連施設だ」 |