「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
/ 4 / 特7課のオフィスに出社すると、さすがに社員はまばらだった。数人いる人間は夜勤だった者だろう。眠そうな顔をしているのをみるにつけ、特にこれといった事件は無かったようだ。 挨拶を交わしながら、特7課用のロッカールームへ。特殊付属警察とはいえ、専用の制服など支給されないため、全員私服で作業に従事している。汚れるのがいやな者は、自費で買った作業服に着替える。勿論、男女別に別れており、ナムはいつものように自分のコートをハンガーに掛けて戻ってきた。 特7課所属を示すバッジだけはわかりやすよう胸に取り付けてある。 オフィスの中をとことこを走り回る穂ノ原を見つけて呼び止める。 「はい! 課長」 「君に重要任務を与える」 「はい!」 びしっ! と敬礼をする穂ノ原。 「あいつらの相手をしてくれ」 ナムの指さした先には、みゅみゅとその取り巻きが戸口の前でつっ立っている。大の男が二人も朝っぱらから汗だくで、脱水症状まで起こしてグロッキー状態だった。 「どちら様ですかー?」 「お客様だ」 ナムは無難な説明をする。 「くれぐれも丁重に扱うように」 厄介ものを押し付け終わったあと、自分の執務室である課長室へと入る。 如月は目だけを寄越してきた。 「オハヨゴザイマス」と言って、もう一人いた客人が立ち上がり、握手を求めてくる。 「初めまして。リクドサン」 男は、微妙にイントネーションの異なる日本語で語りかけた。 ドクは二人のやりとりを尻目に、自分の定位置であるモニタの城へと 「如月部長、この方は?」 「米国連邦調査局の方だそうだ」 「――FBI?」 「YES」 大きなバッジの張り付いた手帳を見せる。 すらりとした背の高い白人男性だ。ブラックのスーツを着てホストクラブにでも顔を出せば、その店のナンバー1をかっさらうに違いない。よく出来たつくりの顔と、涼しげに笑う口元に、世の女どもは大枚はたいてでも自分のものにしたいと考える。 簡潔に言えば、いけ好かないタイプだ。 「オハナシをお聞かせネガいたく」 「はぁ」 不審者のような目つきで男を見る。 「Sorry.ニホンゴ、フナレなもので」 |