「-HOUND DOG- #echoes.」

第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る

「職場に子供はつれていけん」
 ナムは即答する。
「関係者以外を連れて行けば部長からまた小言を聞かされる」
「それなら問題ありませんわ! 如月さまからいつでも遊びにきてよいといわれましたから」
「なに?」
 そんな話は聞いていないぞ。
「昨日お前がくる前に、そういった類の話をしていた」
 サラダをあきらめたドクが立ち上がる。
「俺は聞いていない」
「だからお前が来る前だといったろう」
「そういう話は普通俺を通さないか? おかしいだろそれ」
「文句なら部長に言え。我輩はキーボードを叩いていただけだ」
 特7課の責任者は俺だぞ、と頭を抑える。
「マスター様、ここから引き落として下さいませ!」
 みゅみゅはすでに同行する気十分のようで、カウンターごしに会計をしている。
 アフロが手のひらサイズのプラカードを持ち、表と裏をひっくり返して困った顔をする。
「ゴメンねお嬢ちゃん。うちじゃこれ、取り扱いしてないんだよ」
「?」
 戻ってきた黒いカードを手に不思議そうな少女。
「現金は持っていないのかい?」
「お金なんて重くて持ち歩けませんわ」
「小銭でもいいよ」
「コゼニってなんですの?」
 怪しい雲行きの会話をしている。
「保護者の人、ちょっと」
 呼ばれた瞬間何をすればいいか把握している自分が恨めしい。
「しめて2900円になります」
「……おれの分を引けよ」
「2400円」
 財布から野口銀行券を3枚取り出すと、ふと気づいて後ろに声をかける。
「おい、みゅみゅの部下ども。お前らは――」
 愛想笑いを浮かべた体格違いの二人組が、ズボン両ポケットを引きずり出して、判りやすい状況説明をしてくれた。
「…………」
 ナムは顔を元に戻し、
「マスター、ウェイター二人追加で」
 と言った。
「驚天動地!」
「身売りする気でゲスか!」

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