「-HOUND DOG- #echoes.」
第二話 アンチアンドロイドは羊を数えて眠る
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軽口を交わした次の瞬間。 耳を切り裂く爆音が響き、強烈な爆発が瓦礫もろとも二人を吹っ飛ばす。 地に投げ出され、苦痛のうめきをあげる。 頭がふらつく。 ブレる視界で目撃したのは、黒い鋼に銃身をもつ戦闘車両。 「……あいつら、戦車まで――」 「退くぞ」 自分を助けてくれた隊長を見上げる。 「りょう、かい」 よろめきながら立ち上がり、手に何も持っていないことに気づく。 「ドゥン!」と音がして、長い筒の奥から発射された砲弾が、転がっていたM760Gを鉄くずに変えた。 「何をしている」 「銃が――」 胸ぐらをつかまれて引きずり下ろされ、土を食わされる。 頭上を、すさまじい風切り音をさせて弾頭がかすめていった。 爆風―― 「使え」 頬に当てられたひやりとした感触。 拳銃だった。 戦場では、最も非力で陳腐な代物。 「こんなものでは――」 口に出す前に、彼は理解した。 すぐに手にする。 無いよりはマシだ。 「あの林まで逃げ込む。走れるな」 「はい!」 渡された銃を握りしめる。 「――GO!」 立ち上がって走り出す。 戦車の砲筒がこちらを向く。 自分の人生は、ここで終わりだと思った。 |