「-HOUND DOG- #echoes.」
第一話 怪盗淑女
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握りつぶす。 「モニタが――！」 胸部コクピットにあるサブに切り替える。全方位確認可能なメインモニタと違い、サブは正面方向のみの固定モニタだ。 牙の生えた悪魔の絵。 『コクピットはここか』 巨大な拳がめり込む。強固なチタン合金の装甲が紙のようにやわらくひしゃげた。 『機体を無効化するにゃ、パイロットを潰すのが一番だからな』 引き出した拳には、べっとりと赤い血液が張り付いている。 『あっちゃ、キズモノにしちまった』 陽気な声が場に響く。 どこかから小五月蠅い絶叫が上がるが、気にしない。 戦場ならごく当たり前に聞こえるＢＧＭだ。動かなくなった『ナイト』の残骸を適当に放り投げる。 『さて、残りは二つ』 振り向いた”アガメムノン”の視界に、暗闇に身を隠すように近づいてくる数機のプロペラ音が聞こえてくる。 『――引き上げ時か』 パラパラと音を立ててくる輸送ヘリの音に、闇を切り裂ようにあがる声は打ち消された。 |