「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

『そのようね。顔が怖いもの』
「冗談? それとも感想?」
『どっちも』
『お前等! 現場の指揮権は俺が預かっている! 無謀なことなどするんじゃない!』
「弱気な人の意見など聞けません」
『馬鹿野郎! 課長の意見はいつも正しい! あの人の思考は俺たちとちが――』
『ナイト』10番機からの通信をカット。
「ミナちゃん、適切なサポート、期待してるよ」
『まかせて!』
 勝ち気な声を励みに、電磁警棒を背中から抜き去る。
「止まって。そこのDz――”アガメムノン”。器物損壊と強盗の容疑で逮捕します」
 4つの瞳が子供のように背の低い『ナイト』を捉える。
『――たはッ!』
 聞こえてきたのは、明るい声だった。
『日本の警察ご自慢の機体か。ずいぶん活躍してるそうじゃないの』
 フランクに会話してくる。
「僕らは特殊付属警察甲種特務課です。すぐに機体を捨てて投降して下さい。でないと、天誅が下ります」
『相手は武器を持っていないわ。リボルバカノンで足の関節部分を狙って』
 ミナからの通信。
「警棒を抜いちゃったけど」
『捨てればいいでしょそんなもん!』
「了解」
 この人のお婿さんになるひとって、大変そうだなぁ。
『そうだなぁ。仲間がくるまでの暇つぶしだ。ちょいと”ACTi”のデータ収集に付き合って貰うぜ』
 黒い巨体が残骸を踏みつぶしながら、一歩一歩近づいてくる。
 警棒を脇に捨て、片膝を前にしてしゃがみ込む。
 ガシャコン、という音とともに、下肢に内蔵されたASSリボルバカノン飛び出した。
 キャッチし、そのままロックオン。
「ミナ、調整お願い」
『了解!』
 電視の視界で照準を合わせる。機体事に固有差のブレは搭乗者の感覚でカット、ASSによる反動を考慮に入れた正確な目標あわせは衛星通信を用いた遠隔サポートに頼る。協力プレイでやっと一人前の機体だ。
 引き金を引く。
 Dzoidの破壊を目的としたホローポイント弾だ。貫通性能の高いFMJは対Dzoid戦で使用することは少ない。堅い装甲をもつ機体は貫くよりも、破壊し損傷させることが無効化の最速手段だからだ。
 もちろん、人間サイズとは破壊力は比べものにならない。
 爆発したかのような音を出し、巨大器械用にカスタムされた銃から弾丸が飛び出した。

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