「-HOUND DOG- #echoes.」
第一話 怪盗淑女
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「無理ですか？」 『つーか、手動で掃除ってどーよ？ 本社なんだから自動洗濯器械くらい借りられねーの？』 「時間が時間ですから。特別な用事のある人間しかいませんよ」 『けどなぁ』 「文句言ってると、アレすよ。藤谷主任からまた、鉄の制裁を受けますよ」 『”鋼鉄処女”の鉄槌か？ あの人、片腕器械で出来てるから、アレで殴られると痛いんだよなー』 主任というのは、特７課の中でプロジェクト別の管理役に当たる現場指揮官だ。今は課長が出ばってきているので、”アガメムノン”警備という仕事の総括補助役に回っている。 地下３０階のメイン警備を担当中のはずだ。 「藤谷主任は越権行為が嫌いな人ですから、他部署に頼んだら明日被害確実ですよ」 『イヤな職場だよなぁ』 そのことには納得。 「そうですよねぇ」 『ちょっと！ 喋ってないで仕事してよ！』 脇から強制割り込みによる音声回線共有。 「ミナちゃん。そっちはどう？」 『どうじゃないわよ！ バックアップのあたし等に任せてないであんたも外出て手伝いなさいよ！』 地上の見張りは操縦者３人にバックアップとして２人の計５人。バックアップ要員は操縦者のサポートがメインで、機材を持ち込んだ車の中で待機している。 「でも、誰かがこのこと知らせなきゃ駄目じゃないか」 『繋がらないならどうしようもないでしょーが！ あんたも肉体労働しなさいよね！』 「えー、俺、そういうのって苦手」 『藤谷主任に言いつけてやる』 「オッケー。任せてよ。僕、掃除大得意」 回線切断。ため息をはく。 いつの間にか秋本先輩の通話も切れている。さすが、ベテランは違う。 要領がいいんだから。 通話が残っている。 本部への通信を忘れてた。 発呼状態は解除されている。誰かが受話器をとった証拠だ。 「もしもし。こちら、藤堂」 『藤堂ぉぉぉ』 「やぁ、斉藤元気？」 といって、軽口を叩いたその瞬間、 「？」 機体が地揺れをキャッチ。Ｄｚｏｉｄシステムにより、自立バランス性が高レベルに設定される。 |