「-HOUND DOG- #echoes.」
第一話 怪盗淑女
”ACTi”。 感知式直感連動型操作システム。 搭乗者の行動を監視・先読みし、フィードバック機構による再帰学習機能と即応答の未来策定理論を用いた一体操作性の実現――機械と人との融合。機械との壁をなくすことは新たな人類工学の可能性の始まりである――サプライズ現女社長の談話である。 ”ACTi”を作動させようとして、赤ランプが明滅していることに気づいた。 サブ・モニターに切り替える。 六道南無が”アガメムノン”に取り付いている。 すばやい行動。 迷いがない。 なるほど、実践向きの人材だ。 「ボスが欲しがるのも良くわかる」 「なにか言いました?」 「いんや。空耳だろ」 足元にあるペダルを踏むと、巨人が象のような足を持ち上げ、一歩を踏み出した。 ずん、と振動し、建物全体が揺れる。 取り付いた人間も振り落とされまいと必死に掴まる。 「いっつまっでもっつかなァ」 黒い悪魔は工学ケーブルを縄を引きちぎりながら動き出した。 「よくやりましたわ! このまま外へ出るのです!」 少女が隣でわめきたてる。 「こらこら、暴れなさんな。このコクピットルームは狭いんだから」 「なんですの! これはわたくしのものですの! 貴方なんか地上に出たらぽいですわ!」 「そりゃ困る。俺も乗っけてってよ、お嬢ちゃん」 実質操縦の全権を手中に収めた男が頼りない声でお願いする。 「ダメですわ!」 「ダメかー!」 「無理ですわ!」 「無理かー!」 「早く降りなさいですわ!」 「無理だー!」 「からかってますの!?」 「バレたー!!」 少女が頬を膨らませる。 「たっはっは! なんつって、ジョーダン――」 「早く降りるのですわ!」 「わっ! ちょっとタンマ! 今運転中!!」 ずしん、ずしんとでたらめに暴れだした巨人の前から、泡を食って逃げ出ていく人の波。総重量15トンに轢かれたらぺしゃんこだ。生きられる保障は皆無である。現に警報の知らせに駆けつけてきた警備アンドロイドが無常に踏まれて砕け散っている。 |