「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

「何をやっている! あり――」
 こちらを向いた部下の顔に、ナムは銃を突きつけた。
「鈴木」
「冴えてるねえ。この3Dリアクションホログラム、見かけはほぼ完璧なはずだが、分かっちまった?」
「性格までは変わらんようだ」
「あらま、そっちね」
 にやりと有藤が笑いかける。
 楽しそうな笑みだ。
「藤谷をどうした?」
「彼女ならぐっすりすやすやスリーピング。今頃夢の中さ。他の三人と一緒にな」
「とっとと放せ! 何のつもりだッ」
「お前は何者だ?」
「人にものを尋ねる前に、自分で名乗るのが筋じゃねーの?」
「放せ貴様ッ! 私を誰だと思って――」
「あーもううるせ」
 キュッ、と声を漏らし、首を絞められた李が意識を失う。
「あんたの役目は終わりだ」
「強盗傷害罪の成立だ」
 ナムは銃を自分の部下に成り代わった不審人物の眉間にポイントする。
「俺は六道南無。公安警察・特殊付属警察甲種特務課所属”警部”。お前は何者だ?」
「あっ、鳥」
「騙されるか」
「あっ、そう」
 ひゅるるるる――
 ナムの耳に風を切る音が聞こえてくる。
 上を見上げる。
 黄色いボールのようなものが多量の瓦礫と一緒に地上から落下してくるところだった。
「鳥じゃないぞ!」
 奇妙なボールは落ちてくるなりぽむっと弾み、スーパーボールのようになんどか飛び跳ねたあと、床をごろごろ転がった。
 巻き込まれた何人かの公務員の上で、縦に割れて中身を吐き出す。
「きゅぅ」
 見慣れた二つの顔が出てきたとたん、ナムはめまいがした。

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