「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

「ぎええ!!」
「怪盗ピンクか! 住居侵入罪と窃盗未遂で逮捕する!」
 日本の優秀なお巡りさんが、変態3人組を取り囲んだ。
「どれよガリ!」
 状況を全く分かっていないのか、怪盗ピンクは子分が指したモノを見て目を見開いた。
「あれが、お父様の捜していた機械――」
「君!」
 警官たちをかき分け、李が少女の前に立つ。
「ふざけた遊びをしてくれたものだ。我々の開発の邪魔をせんで貰おう」
「あれは貴方たちの物じゃない! お父様の物よ!」
「父親だと? 犯人がこんなガキだったとは、六道君、さっさとつまみ出せ。目障りだ」
「はい」
 ナムは大人しく自分より立場が上の人間の言葉に従った。
「さぁ、おいで」
 手を広げると、ムチが飛んでくる。
「うおぅ!」
「そこをどきなさい! あれはお父様の物よ!」
「まだ言うか!」
 立ち去りかけた李が血相を変えて戻ってくる。
「父親とは誰だ! すぐにその親に呼んで連絡してこっぴどく叱ってやる!」
「う……それじゃ顔と名前を隠した意味がありませんの」
 李の剣幕に押されつつ、面をした怪盗ははじめてまともな意見を口にする。
「子供だと思って何をしても許されると思うのは間違いだ! 世の中の平等というものを知らせてくれる!」
 李が少女へと襲い掛かった。
 きゃぁ! と叫び、スカートを翻して身を避ける。
「ガリ! ブッチョ! 何をしていますの! 私を助けるのです!」
 片っぽは失神、もう片っぽは床にへばりついてムチの痛みに耐えている。
「なんて役に立ちませんの!!」
 自分でしたことを棚に上げて女の子は叫ぶ。
 思春期の少女は3秒たつとやったことを忘れる。
「我らはこの開発に命をささげている。子供一人の悪戯で邪魔されてなるものか!」
「まぁまぁ李サン、待ちなさいよ」
 そういって、彼を背後から抱きとめる男。
 ナムの部下の一人、さきほど藤谷主任に預けた臆病3人組の有藤清治だ。担当はほぼバックアップしか行わない、人に意見も言わないような内気な小心者である。
「女の子に暴力はいけない」
 普段の態度から想像もつかないほど大胆に、有藤は他部門の上長を組み敷いて説得していた。
「よくやりましたわ!」
 少女がほめて、その脇をすり抜ける。

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