「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

「ふっ、来たか」
 腕組みしたドクが出迎えると、人工ナイトがそろって驚きの声を上げる。
『セイレンさん! 何でそんなところに!?』
「笑止! 今の私はイルカヤ・セイレンではない。謎のマッドサイエンティストSだ!」
 怪盗ピンクがつけていたものと酷似した仮面を取り出し、すちゃっ、と顔に取り付ける。
 顔と比例して仮面の面積のほうが大きい。
『そうです! 先輩はマゾのサイエンティストなのですよ!』
「一文字違う! 余計なことを言うな!」
 ガンッ、とパイロットルームの防御壁を蹴飛ばす。
『きゃうん!』
『穂ノ原さんも。お二人ともいい加減にしてください! 話は聞いていましたけど、こんな話は聞いていませんよ!』
「謎のマッドサイエンティストはそんなことは知らない! ただ破壊の衝動のみがこの体を突き動かす! ゆけぃ、穂ノ原!」
『アターック!』
 ジャキン。
 4つの腕に装備された重火器が一斉に火砲を『ナイト』に向ける。
 無表情なはずの3体の機体の頭部が青ざめる。
『さ、散開!』
「遅いわ!!」
 号令一下、レーザービームと超電磁誘導弾、殲滅用多発式弾頭と特殊加工弾が発射された。
『うわっ!』
『本ッ気だあの人!』
「ハッハッハッハ! 避けられるものなら避けてみよ!!」
 悪役らしく大げさに振舞う。
 3体の『ナイト』は別々に散開した後、それぞれに武器を取り出した。
 電磁警棒。近接戦闘用に作成された巨大ハンマー。内蔵した電力で相手を痺れさせて無力化する。
 ASSリボルバカノン。体格に合わせたゆえの命中精度を引き上げるため、ASS(反作用感知緩和システム)を採用し、銃撃の反動を極力ゼロに近づけた連発式小銃。
 セラミック合金シールド。サプライズ軍需向け製品”タイラント”シリーズに主に付属している特殊装甲の盾。ある程度の火力の武器を無効化できる。普段は背面装備の重量品。
 光の速さで伸びてきたレーザーがシールドにメッキされた超高密ガラス層に屈折を余儀なくされ、極小化された熱量を残して四散する。
 超電磁誘導弾は『ナイト』一体の頭部を根こそぎ持ち去り、近くの倉庫の壁に奇妙なオブジェを撃ちつけた。頭部のモニタを破壊された特7課の社員が、ののしりの言葉を吐く。破損Dzoidの修繕費は彼の給料から数%を確実に上跳ねする。
 六発の小型ミサイルを電磁警棒を持った別の『ナイト』が叩き落しにかかる。

[進む>>]

[<<戻る]

[TOP]

Copyright (C) 2010 Sesyuu Fujita All rights reserved.