「-HOUND DOG- #echoes.」
第一話 怪盗淑女
/ 13 / 「ふふふ。愚民どもが」 眼下で慌てふためく人間を『タンク』の肩から見下ろし、その人物は哄笑をあげた。 「わめけ! ひれ伏せ! そして吾輩にこういうのだ! ”二度と子供扱いしません”と!」 強風にあおられ、小さな体が吹き飛びそうになる。 なんとか『タンク』の防御殻にしがみつく。 「穂ノ原! 速い! 速いぞ!! もう少し安全運転でも吾輩はかまわない!!」 『任せてください! ホノやりますよ!』 防御殻の中から威勢のいい声がする。 キャタピラで出せる性能の限界を超え、車輪に火花を散らせて突進してくるDzoidに、警備していた警官や同僚は右往左往していた。 「ふふふ。みたか! 吾輩の手で生まれ変わったこの『タンク・疾風怒濤・夢見心地R』!! 貴様ら公僕どもなぞ目ではないわ!!」 6本の腕にはレーザーガン、リニアレールバガン、6連発ロケットランチャー、パーライト速射砲が燦然と輝き、あまった二つの腕で駐車場に停めてあるDzoidをぽいぽいと海の中へと捨てている。 たまに原子変換電力核を搭載したDzoidが海水に浸ってバッテリーがショートし、燃料タンクに引火して、どかん! どかん! と海中で爆発している。 「いけ! 穂ノ原! われわれの実力を知らしめるのだ!」 『オッケーです!』 「貴様らぁ!!」 駆けつけてきた乙女塚刑事は、現場の惨憺たる有様に唖然とした。 炎に包まれた駐車場に、青い塗装を紅蓮に染めて暴れまわるDzoidがひとつ。 「くそっ! 六道! デカブツ相手はヤツの専門だろう!」 公僕である乙女塚たちには、無駄に経費のかかる個人用Dzoidなど与えられていない。少子化により国内総人口が極端に減ったせいで税金が集まらず、体裁以外に金のかかる装備は与えられていない。戦闘はまるっきり特7課任せである。 そのための特設課ではあるが。 『遅れました!』 ブーストさせた熱輪駆動が熱風を巻き起こし、当の専属部隊が到着する。 全体が白と黒で染め上げれたポリスカラー。胸元には桜の代紋。サプライズが総力を結集し、CDz(犯罪Dzoid乗り)対抗機として送り出しただけはあり、まるで人工的な鎧を着たナイトのようなフォルムは、子供たちに国家権力に対する憧れを、犯罪者には正義の鉄槌を適確に下す。両肩には点滅する赤いパトランプ。 ちなみに特7課への入課必須要件として、Dzoidの免許を取得していることが第一に挙げられる。 『今から掃討開始します。警部殿は離れて!』 「俺は刑事だ!」 わざとか貴様! わかっているんだぞ! という声援に見送られ、3体の特7課専用Dzoid――フォトンP83が立ちふさがる。 |