「-HOUND DOG- #echoes.」
第一話 怪盗淑女
「こ、この方が責めてくるのか…」 「何という形而下学的肢体――」 「む、ムチなんて、なんて破廉恥な」 どうでもいいが、あまり顔を近づけるなよ。とナムは片時も目を離そうとしないD4課の連中に言いたくなった。 「そ、そうか。ならば、これは厳重に警備しなければならん」 赤いマントを前にした雄牛みたいに鼻息を噴き出しながら、権之進は気合い充分に語る。 「怪盗ピンクはこの俺が絶対に引っ捕らえてやる! おまえなんかには渡さんからな!」 「あーはいはいそうですか」 目の色の変わった中年をうろんな目ツキで蔑む。 「それじゃ、こっちも好きにやらせてもらうぜ」 ナムは画面を閉じて、立ち上がった。 囲んでいた連中が素知らぬふりをして作業に戻っていく。 どこも、いろいろ大変なんだなぁ。 ナムは深い感慨に包まれたあと、備え付けの受話器を取って、自分の課に向け人員調整の連絡をいれた。 |