「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

「否定はせん」
「だろ? 俺たちだって別にヘビーな仕事が好きなワケじゃない。楽に片付ければそれに越したことはないんだ。おまえもそう思うだろ?」
「別に吾輩でなくとも良いだろう」
「これこれ。ちょっとここ見てみ」
 といって、ナムが指さした場所には、”メカニック優遇”と書いてある。
 機械工学と電子工学の博士号をドクは持っている。ハードもソフトも彼にとっては趣味の玩具同然である。
「ね?」
「ね? ではない。吾輩はイヤだ」
「そういうな。これも仕事のうちだ」
「ナムがやればよい」
「俺? 俺は駄目だよ。機械オンチだし、さすがに”警部”が犯罪者の組織に手を貸すのはねぇ」
 ナムの現在の公職の肩書きは”警部”である。”刑事”よりも”警部補”よりも上にある。
「……わかった」
 ドクは観念したようだった。
「あと、もう一つやって欲しいことがあるんだ」
 やさぐれた目ツキの子供がナムを睨む。
 そのあまりのグレっぷりに愛想笑いでごまをする。
「このサイトをハックして、もし依頼メールが発生したらあると場所に送信するようにしておいて欲しい」
「……別料金だ」
「追加手当くらいは出すから」
 苦笑いを浮かべるナム。
「で、そのアドレスは?」
「決まってるだろ?」
 ナムは楽しそうに笑った。
「京都府警察・サイバーテロ総括本部局だ」

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