「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

「あっ! すごいですよ! このサイト、次回予告まで載せています! えーと、”サプライズ社の超極秘Dzoid盗みます。結果報告お楽しみに。”ですって」
「ほう。なめられたもんだ」
 ようやく我に返ったナムは、穂ノ原の隣からサイトをのぞき込んで不敵に笑った。
「こういう奴には世間の厳しさというものを教えてやらねばならん」
「うわー、課長いやらしいです!」
「……そういう意味じゃないよ。穂ノ原君」
 自分の笑みはそう見えるんだろうかと、意気消沈する。
「他に情報はないか?」
 気を取り直して穂ノ原に操作を任せる。
「うーん、他ですか? えーと、”自社は安心・確実・時間厳守をモットーとした総合泥棒専門会社です。依頼主の秘密は口が裂けても漏らしません”」
「次」
「えーと、”ご依頼の方は下記の宛先まで”」
「ネットで営業しているのか」
「いや、案外利口な手かもしれん」
 ドクが口を挟んでくる。
「相手の顔がみえなくとも商売が成り立つ。かつ、自分の顔も見られることもない」
「自分の顔は仮面で隠しているようだが」
 隠しきれないボディラインにイヤでも目がいってしまうのは別として。
「ネットの匿名性というのは昔から変わらん」
「なるほどな」
「”バイト募集中。要面接。時給歩合制による”」
「……おい、今なんて言った?」
 ナムは穂ノ原が読み上げたページをもう一度繰り返させる。
「バイトの募集をしているのか」
「どこでも人材不足なのだな」
 訳知り顔で、ドクがほろりと愚痴を漏らす。
「そうだな。ところでドク。おまえ、株で損した分をバイトで稼いでみる気はないか?」
「つつしんで辞退しよう」
「まぁそういうな。穂ノ原君も付けるから」
「……マイナスになる特典をつけてどうする気だ?」
 ドクはナムに向けて敵意に満ちた目を向けた。
「セイレン先輩! ホノやりますよ!」
「ほら見ろ。本人はやる気十分じゃないか」
「そのやる気が空回りしかしなかった記憶しかないんだが」
「まぁそういうな。厄介払いできて一石二鳥じゃないか!」
「ナム。貴様の性格は災いの元だ」
「落ち着けよドク」
 リニアレールガンを引っ張り出してきた同僚をどうどうとなだめすかす。
「奴らの一味に潜り込めば、この件わざわざ警備に神経すり減らさなくとも楽に終わるとおもわんか?」

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