「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

「な、ちがう! ”MYドクくん”は失敗作などではない!!」
「……お前今、とんでもないこと口にしなかったか?」
「しておらん! ”MYドクくん”は吾輩の友達だ!」
 モニタをかばう部下に冷たい目を向ける。
「信じてやるから早く情報を集めろ」
「ううっ、ぐすっ。”MYドクくん”。最後のお願いだ頼む」
 3番目の項目をクリックする。
 青いカブトムシが出てきた。
「全然ダメじゃないか」
「MYドクくん! なぜそんなタツノ○プロの作品を選ぶんだ!!」
 モニタの中のドクはオロオロしている。
「敵キャラは怪盗というよりドロボウだな」
「課長お詳しいんですね!」
 穂ノ原からそんな一言を受け、ナムは視線をそらせる。
「ち、違う。たまたま昔DVDをみただけで……」
 言い訳をしている間に、別の項目をクリックする。
 悩ましげな女性がウインクしてきた。
「……”MYドクくん”。どこまで期待を裏切れば……」
「ちょっと待てドク」
 ナムが近づくと、”MYドクくん”はモニタの外へ逃げていった。
 サイトは残ったままなのでどうでもいいが。
「どうやら当たりらしいな」
 ”怪盗よろず相談所”と書かれた看板の画像が大々的に表示されている。
「そら見ろ! 素晴らしきこの英知!」
 別のモニタで”MYドクくん”も胸をそらしている。
「入ってみるか」
 『御開場』と書かれた本サイトへの入り口らしき文字をクリックする。
 突然沸き起こる嬌声。
 画面からこちらにむけて派手な効果音とともに鞭が振るわれたあと、全身タイツの女性が高笑いしながらフェードインしてくる。
 ナムとドクが冷や汗を流して身を引いた。
 穂ノ原だけが珍しそうにタイツの女性を凝視している。
 パソコンから響いた嬌声に、何事かと部下が課長室の扉の前を不思議そうに通り過ぎる。
「な、何なんだこいつ」
「怪盗とか言う以前に人間的に問題がありそうな気がするな」
 木製の椅子に腰掛けて足を組んでいる怪盗を見ながら、この仕事やめたいな、と二人の気持ちは一致する。
「”よろず相談承ります。盗み、強盗、誘拐何でもまずはメールで。お試しプランもあります”」
 穂ノ原が読み上げるのを、少し離れた場所から聴いている。

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