「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

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 全員がドクのデスクに集まってくる。
 モニタ上では”MYドクくん”が盛んに飛び跳ねている。
 自分の分身をクリックすると、検索結果のデータが次々と表示され、やがて瞬く間に絞り込まれたサイトが幾つか表示された。
 一番上のサイトをクリックする。

――チャーラッチャーラッチャチャチャッ・チャー♪

 耳に残る曲が流れてくる。
 ナムも聴いたことのある曲だった。
 ワルサーP38の実物に限りなく再現された3DCGが表示され、怪盗紳士の赤いスーツが鮮やかに映し出される。
「ルパン○世か。いまだに人気が衰えない大作だ」
 ドクは「×」ボタンを押した。
「だが、今探しているものとは違う」
「おいおい、まったく当てになってないじゃないか」
 ナムが文句を言うと、ドクは「まぁ待て」とその不平をとめた。
「次だ」
 2番目に表示されたサイトをクリックする。
 ”奇岩城”。
「一世のほうだな」
 冷静な声でナムがタイトルを読み上げる。
「検索ワードが抽象的過ぎたかもしれん」
「いったい何で検索をかけたんだ?」
「怪盗」
 続きはなかった。
「それだけ?」
「うむ」
 偉そうな態度のドクに、浅はかな自分の思慮を呪う。
「せめて”怪盗ピンク”までは絞り込むべきじゃなかったか?」
「何を言う。吾輩の思考をなめるな!」
 モニタの中のドクまで抗議してくる。
「人工知能を組み込んだこのAI”MYドクくん”は吾輩のバイオリズムから今日の昼食の献立までを教えてくれる万能仮想人格だ! 吾輩の思考と寸分たがわぬ検索結果を教えてくれるわ!」
「じゃぁお前は何か? 事件のことよりアニメや小説のほうに興味があるのか?」
「……たぶん、な」
「全然思考があってないじゃないか!」
 ナムに突っ込まれ、ドクはモニタの中の分身と一緒にうろたえた。

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