「-HOUND DOG- #echoes.」
第一話 怪盗淑女
/ 4 / 机の上に差し出されたカ−ドを見て、南無は上司の顔をまじまじと見た。 「何か?」 「如月部長もコレクター趣味などをお持ちなので?」 「そんな趣味などもってはいない」 「しかし」 カードを指差し、ナムは表に書かれた絵柄を強調する。 「これはどう見ても、ト○ーディングカードという類のものでは」 アニメチックな女性キャラが鞭を振り回し、タイトな着物で色目を使っている。 「知らん」 まぁ、確かに。 こういうものに目の色を変える性格とは思えないが。 いや、人は見かけによらない。堅物と言えど、男は誰でもその特性上何かしらの収集癖を持つという話だ。無趣味な彼にひとつくらい趣味があったとしても…… ナムはふっ、と底意地悪い笑みを浮べた。 弱み、ゲットだぜ。 「今日、わが社に送りつけられてきた犯行の予告状だ」 「よこく……なんです?」 カードを裏返す如月。 そこには、”アガメムノン強奪予定時刻 AM0:00”と可愛らしい文字で書かれている。 「アガメムノン?」 聴きなれない言葉に、ナムは口に出して尋ねる。 「”アガメムノン”。プロジェクトコードネームだ。開発登録コードはPKLFーC207−XX。わが社で開発中の軍事向けDzoidだ」 「軍需開発ですか」 嫌そうな顔をしてナムは呟く。 「ああ。わが社は多角経営で専業を増やしてきた。需要があるなら率先して引き受け、利益を生み出す。コングロマリットとしては当たり前の戦略だろう」 「それとこれと、うちとどんな関係があるんですか? 開発部の問題でしょう」 「開発部に暴力沙汰向きの人間がいれば話は別だがね」 カードを元のとおりに表返し、眼鏡の中央を押し込む。 「怪盗ピンクと言うそうだ。この女性は」 「ピンク」 ださっ。 と口に出しかける。 ピンクというより、この格好は紫のほうが正しい気がするが。青少年の妄想を膨らませるには大胆なタイツ姿。 「怪盗? このご時世に怪盗? ふはは!!」 定位置である自分の席へ戻っていたドクが盛大に笑い声を上げた。 |