「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

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 机の上に差し出されたカ−ドを見て、南無は上司の顔をまじまじと見た。
「何か?」
「如月部長もコレクター趣味などをお持ちなので?」
「そんな趣味などもってはいない」
「しかし」
 カードを指差し、ナムは表に書かれた絵柄を強調する。
「これはどう見ても、ト○ーディングカードという類のものでは」
 アニメチックな女性キャラが鞭を振り回し、タイトな着物で色目を使っている。
「知らん」
 まぁ、確かに。
 こういうものに目の色を変える性格とは思えないが。
 いや、人は見かけによらない。堅物と言えど、男は誰でもその特性上何かしらの収集癖を持つという話だ。無趣味な彼にひとつくらい趣味があったとしても……
 ナムはふっ、と底意地悪い笑みを浮べた。
 弱み、ゲットだぜ。
「今日、わが社に送りつけられてきた犯行の予告状だ」
「よこく……なんです?」
 カードを裏返す如月。
 そこには、”アガメムノン強奪予定時刻 AM0:00”と可愛らしい文字で書かれている。
「アガメムノン?」
 聴きなれない言葉に、ナムは口に出して尋ねる。
「”アガメムノン”。プロジェクトコードネームだ。開発登録コードはPKLFーC207−XX。わが社で開発中の軍事向けDzoidだ」
「軍需開発ですか」
 嫌そうな顔をしてナムは呟く。
「ああ。わが社は多角経営で専業を増やしてきた。需要があるなら率先して引き受け、利益を生み出す。コングロマリットとしては当たり前の戦略だろう」
「それとこれと、うちとどんな関係があるんですか? 開発部の問題でしょう」
「開発部に暴力沙汰向きの人間がいれば話は別だがね」
 カードを元のとおりに表返し、眼鏡の中央を押し込む。
「怪盗ピンクと言うそうだ。この女性は」
「ピンク」
 ださっ。
 と口に出しかける。
 ピンクというより、この格好は紫のほうが正しい気がするが。青少年の妄想を膨らませるには大胆なタイツ姿。
「怪盗? このご時世に怪盗? ふはは!!」
 定位置である自分の席へ戻っていたドクが盛大に笑い声を上げた。

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