「-HOUND DOG- #echoes.」

第一話 怪盗淑女

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 ロボット産業は二足歩行から急激に成長し、等身大のヒトモドキから人間が乗り、操ることのできる精密機械にまで発展した。
 ロボット工学はその根幹となるシステムをある一人の技術研究者の手によって汎用的なシステムへと昇華され、模型をベースとした重心安定機構「Dimamic zwei observe interface driven」――Dzoidと公称され、瞬く間に全世界へと広まった。
 開発した技術を惜しげもなく世界に発信し、その有効性から次々と特許を獲得、その特許をさらなる技術発展に生かすべく
 全仕様情報を電子の世界インターネットへ発信した人物の名は北斗源三博士。
 実質特許料無料という驚愕の情報公開は、彼の予想通りに世界中で賞賛され、いまやその名をしらぬものはいないとまで取りざたされた人物である。
 Dzoidの開発は他の分野にも影響し、人の自律神経を擬似的に再現したアンドロイド用システムの確立、複合学習型AIの”TRIDENTS”テクノロジの完成、Dzoidのシステムを応用した人への臓器器官の取り替え技術など、様々な分野にその功績を拡大させた。
 
 彼には灰色の頭脳だけでなく、双璧の右腕とも呼ぶべき優秀な二人の助手がいた。
 ラルム・ヒドゥン工学博士。主に二足駆動のバランス理論を詳細に述べた論文を投稿し、Dzoidの研究に深く関わった若き天才。
 有里歩医学博士。Dzoidの資料を基に医療分野に困難と言われていたマイクロ化の課題を克服し、不治の病に悩む数多の患者を救うこととなった壮年の大学教授。
 彼らはともに北斗博士の研究チームに在籍し、異なる分野で名を馳せた実力者であった。
 北斗博士はその後も”Dzoidにおける効率的なエネルギー代謝について””非人間を介する独立独歩のAIシステムの草稿””生物学の観点から見た今後のDzoidの展望”など、幾多の論文を発表し、業界を震撼させる仕様を提案して世界の技術者の度肝をぬいたが、85年に惜しまれながらもこの世を去る。61歳という若さであった。
 Dzoidはそれ以降も改良に改良を重ね、安全設計と能率に優れた産業機械として様々な場所で活躍した。
 
 だがその裏で、その高尚な技術は惜しげもなく戦争地域へも投入されていく。
 
 AC2082。Dzoidが公式に米国軍隊への導入が決定された。
 テストを兼ねた紛争地域へ投入された日本製”マクスウェルTYPEU”は華々しい戦果を上げた。
 巨大な強化プロテクトは鉛程度では歯が立たず、テロリストの主要拠点と目された西アジアの石油大国では数多の敵兵が鋼の巨兵の銃弾に倒れた。
 そのあまりの最強ぶりに酔った兵士が村一つを焼き払ったことは絶好のニュースソースとしてメディアを賑わせ、ごうごうたる非難を呼んだが、結果的に全世界に新兵器の実用性を目の当たりにさせ、多くの国が軍事採用に踏み切ることとなる。

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