「-HOUND DOG- #echoes.」
第一話 怪盗淑女
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確かに今現在特に大して用事はない。 「……あんまり素直だと身を滅ぼすよ」 ぼそりと教訓を告げる。 「はい! 肝に銘じます!」 明るい笑顔。 この子には何を言っても無駄なのだ。 はは。と疲れたような表情を浮かべる。 「凶悪犯を捕まえたんですね!」 きらきらと純粋すぎる瞳を向けて尋ねてくる部下の、あまりの眩しさに手をかざす。 「それが仕事だからね」 「凄いじゃないですか! なんたって凶悪犯ですよ! 矢とか鉄砲とか刀とか振り回してくる相手を倒すなんて、やっぱり課長は格好イイです!」 「ああ、そりゃありがと」 迷惑以外の何者でもない顔を浮かべ、ナムはさっさと帰ってくれないかな。と思った。 彼は女という別次元の種族が苦手だ。 「で、どうやって倒したんですか!? やっぱ肉体を武器に得意の空手でアチョー!ですか? それとも得意の銃で脳天をぶちぬいて「おまえはもう、死んでいる?」とかですか? あ、もしかしたら刀でずばっと一突き」 「あのね、穂ノ原君」 ナムはげんなりした顔で言った。 「はい!」 屈託のない笑顔。 世の中の健全な男子なら、この子の笑顔に勝てる人種などいないだろう。 世の中にはいつでも例外がいる。 「俺たちは警察だ」 「民間警察です」 「……略しすぎたか。俺たちは公的な犯罪者を取り締まる機関である警察庁から認可を得て犯罪者を取り締まる機関となった株式会社サプライズ特殊七課――特殊付属警察甲種特務課だ。その仕事の範疇は警察の権限を越えてはならない。つまりは、”コロシ”は万事”違法”ということだ」 「殺しちゃ駄目なんですか!?」 「そこで驚くキミの気心が知れない」 独り言のように呟くナム。 「”殺し”は最後の手段だって事だ。犯罪者に手厚い人権を、というのが法律で決まっている。たとえ正当防衛を主張しようとも、それが認められる確率は天文学的な数値に等しい。散々やられて反撃すら出来なくなった時点でようやく正当防衛の機会が与えられる。そういうときはたいがい遅いが」 「そうですよ! やる前にやっちゃいましょう!」 「……別に俺は止めんが」 「ほォ〜のォ〜はァ〜らァ〜〜〜〜〜〜!!!」 二人が目を向けると、自分のデスクの上に仁王立ちした子供の姿がある。 |