「二霊二拍手! 巻之二」
第一話 出会いは突然に
「どうぞ」
重箱を受けとった瞬間、敵意にみちた視線がプス!プス!プス!と背後からつき刺さった。
おそるおそるふり返る。
白いハチマキを巻いた集団が、志村を先頭に並んでいた。
マジックで書かれた「傷心連合」の文字が風にたなびいている。
「ばかな……! 復活したのか!?」
まるで荒野をみてきたかのようなスサんだ目ツキの集団を、これまたかかわりあいにならないように避けてとおる生徒たち。
「お友達でして?」
「かつては友でした……だが、いまは!」
ハチマキの集団は足なみをそろえて歩いてくると、日和と対峙した。
「なんのようだ弁当泥棒!」
「無責任ないいがかりはやめてもらおう」
「いいがかり違うじゃん! よこどりしただろ志村!!」
「過去のことは水にながそうじゃないか。かれらも反省している」
ハチマキの集団は一斉にうむ。とうなずいた。
「うそつけ!」
「志村薫です。昨日は友の好意により、あなたのまごころづくしのお弁当のお相伴にあずかりました」
「だまされてはダメですよ香月さん! こいつらはひとの弁当をねらうハイエナです!」
「ご学友にむけて、その言葉は失礼ですよ」
やんわりと否定され、日和はひどく恐縮した。
「で、でもですね! こいつらことわりもなくオレの……あなたの弁当をですね!」
しどろもどろな彼を尻目に、香月は優雅にあたまを下げた。
「東香月と申します。春日様とは許嫁の契りを結ばせていただいております」
よく通る声ではっきり告げられ、後ろの日和がぽっ。と顔を赤くした。
ズダーン!
振動とともに校庭がゆれた。
ハチマキの集団がそろってひざを折り、地面に手をついていた。
「なんていう残酷な現実」
「まさか本人からじかに耳にするとは」
「もはやおれたちに明日はない……」
ココロの折れようはみていて同情をさそうものだった。
「日和様。今日の放課後、なにかご予定はございまして?」
日和以上に残酷な言葉を告げた少女は、顔を赤くしたままの彼にたずねた。
「全然! まったくなんにもナッシング!」
親指をたてた即答が返ってくる。
実際はいつものように、あえかの元で修練があるはずだが、いまの彼にはまともに考えるだけの思考力はなかった。
|
Copyright (C) 2014 にゃん翁 All rights reserved.