「二二拍手 巻之二」

第一話 出会いは突然に

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「なんていうヘマをしちまったんだァァァーー!!」
 夕日がまぶしい。
 うぉぉぉん! と悲嘆(ひたん)にくれる日和を背に、学生服のポケットからケータイを取りだす。
「ひーちゃんよ、お()さんへの連絡先わかるか?」
「こうなればかえ玉を用意するしか――ッ」
「すぐバレるに決まってんだろ」
「オレのこづかいであんなカガミより上等なものを用意するんだ!」
「趣旨かわってんぞ」
「なに言ってんだいっちゃん! 男は甲斐性だって、オレの親父も言ってた!」
「いいから番号おしえろよ」
「番号? なんの?」
 不思議そうに大沢木をみた日和は、その手のなかにあるケータイを見つけて大げさにおののく。
「悪魔の兵器がまたここに!?」
 おののく日和の原因が自分のケータイだと気づいてあきれる。
「ケータイデンワが悪魔の兵器ならどれだけ量産されてるとおもってんだ」
「オレはそいつで極限まで追いつめられたんだよ。なんという万能兵器」
「おまえだってもってるだろ? ケータイくらい」
「もってねーよ!」
「マジか? 俺でも持ってんだぜ!?」
 めったに使うことはないが、最低限の連絡手段として母親がもたせている型オチ機種である。
「オレの家、ケータイ禁止令が発令されてるんだ」
 ユーウツな表情でつぶやく日和。
「物心つくころにアホ親父がケータイつかって浮気くりかえしたあげく、犯行現場おさえられて再起不能にされたんだ。そのとき、家庭内条例で署名捺印(なついん)させられたんだよ」
「なんだそりゃ」
 苦笑する大沢木。
「マジなんだって。おかげでいまだオレは文明の利器すら知らない縄文原人ですよ?」
「まぁ、無ェならしかたねえさ。俺がかけるから、お師さんの番号をおしえてくれよ」
「断る!!」
「なんでだ!」
 予想外の返答におもわずキレる大沢木。
「師匠への直通電話はオレにだけゆるされた特権だ!」
「ンなもん調べりゃ誰でもわかンだよ」
「馬鹿な!?」
 ヨロリとよろめき、もはや見なれた格好で地面に手をつく。
「師匠にまで裏切られていたなんて」
「……いまからひーちゃんが走って伝えにいってもいいんだけどヨォ」



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