「二二拍手 巻之二」

第一話 出会いは突然に

 少女は急に頭を下げると、止めるまもなく奥のほうへと逃げていった。
 パタパタと、スリッパが階段をあがる音が聞こえる。
「……ひーちゃんのせいだな」
 今だもだえつづける友人を冷然と見すえ、大沢木はつぶやいた。
「くっ……最大級の宝をもってしても説得は無理だったか」
 わざとらしく口元をぬぐい、子鹿のようにおぼつかない足どりで立ち上がる。
「さすがにもうひとつのほうは無理だと思って」
「なんの言い訳だよ」
「オレにも常識ってものがあるんだよ」
 大沢木は嘆息すると、言った。
「ま、いいけどよ。怒られるのはおまえだし」




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