「二二拍手 巻之二」

第一話 出会いは突然に

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「一段だけでもけっこう量があったんだな。あいつらに分けてやって正解だったよなー」
 放課後である。
 ほかの学生たちが部室へむかう中、重箱を下げてぶらぶらと自転車置き場へむかう日和。いわゆる帰宅部の彼だが、これからが一日の本番といっても過言ではない。
 自称、真心錬気道門下生筆頭である彼は毎日が(たたか)いの日々である。
 スポーツなんて子供のあそびだ。
 真心錬気道は古代からつづく武術の一派であり、対霊物を対象とした祓いの儀式でもある。轟あえかはその唯一無二の(つか)い手であり、様々な霊障を解決するエキスパートである。
 ここ弓杜町(ゆみもりちょう)は特異な地形なのか、いくつもオカルト現象が多発する。師匠いわく、気脈の乱れで霊的磁場が不安定だとかむずかしい説明されたが、とにかく夏の特別番組でよく特集を組まれるほどのオカルトスポットである。
 現実におこる霊害を取りのぞき、そのスジの人間ならば一目置く”舞姫”。
 そのチチをねらう若きサムライ春日日和。
 組み手のときが勝負。
 今日はどんな作戦でいくか。
 不遜な懸想(けそう)でうんうんうなっていると、
「あの〜」
 声をかけられた。
 志村度Aランクのかなりかわいい女の子が前にいた。
 あたりをキョロキョロ見回し、ほかに誰もいないのを見てとる。
「俺?」
 指さし確認。
「ほかにいませんけど?」
 不審そうな彼女。
 みれば、緋色の生地に白が映える制服。
 ルカ女の子だ。
 なんでこんなところにいるんだろう?
「さがしものがあってぇ、ご協力おねがいできませんかぁ?」
 甘えた声に、疑問は意識のかなたに消し飛んだ。
「オーケイベイベー! このボクにまかせなさい」
「よかった。えっとォ、人をさがしているんですけどォ」
「こうみえてボクは顔がひろいよ」
「うんうん、助かりますゥ。春日日和ってオトコのコ、お知り合いにいらっしゃいません?」
 まじまじと正面から女の子をみる。
「ああ、もち知ってる」
「本当ですか!?」
 パァ、と少女の顔が明るくかがやいた。
「なにを隠そう、このボクが春日日和その人さ!」



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