「二二拍手 巻之二」

第一話 出会いは突然に

 構える日和。
「そのバトル、オレも加わらせてもらおう!」
「ほう」
 うでを組む志村。
 その左右に続々と居並ぶフラれた男たち。
「この鉄壁の防御をぬけられるというのか」
「ぬけてみせるさ」
 不適の笑う挑戦者。
「そう。愛のために!」
「ぐおっ」
 一人がうめいて倒れた。
「その弁当は、あず……香月が(よび捨て)!!「ぐおっ」このオレのために「ぐはっ」作ってくれた「げふっ」愛妻弁当だ!!」
 心理的ダメージを受けてバタバタと倒れていく男たち。
 志村も倒れていた。
「オマエが倒れてどうすんだ」
 御堂が手を貸すと、志村はうつろな目をしてボソボソつぶやく。
「いいんだ。オレなんかどーせ路傍(ろぼう)の石ころなんだ。日和のチャリにはじき飛ばされてそこらの田んぼにずぶりとハマリこむ、そんな人生なんだよ」
「いきなりそこまでネガティブに落ちるか」
()った!」
 スキをねらった日和が、重箱の三段目を手にする。
「これはオレんだ! だれにもやらねー!」
 ガツガツと口の中へかきこむ日和。
「うむ! うまい!!」
 あたりに散らばる敗残者のむくろ。
 すこしだけ静かになった教室に、ガタン! とおおきな音がひびく。
 委員長である南雲美鈴が席を立ち、廊下へと出ていく。
 雑誌をアイマスクがわりに昼寝を決めこんでいたクラス一の不良だけが、その様子に不審げなまなざしを向けた。




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