「二二拍手 巻之二」

第一話 出会いは突然に

 御堂の手をふりはらい、志村は日和につめよる。
「おれとおまえのなにがちがうってんだよー!!」
 うおおぉん、と号泣する志村。
「そうだ! 辞退せよ春日日和!」
「即刻彼女のもとへ行き、別れを宣言するのだ!」
 口々に勝手なことを言う野郎どもにカチンとくる。
「へっ、わかってネェのはおまえらのほうだぜ。あの子のほうからオレに告白してきたのですよ?」
「それはないな」
「ない」
「日和、つくならもっとマシなウソつけよ」
「ウソじゃねーよ! ウソみたいだけどウソじゃねーもん!」
 全員から否定の目でみられて必死で言いかえすのがものの哀れをさそう。
「昨日だけどよ、オレ、あの子と許嫁(いいなずけ)の約束まで取りつけたんだぜ」

 しん――

 空気が凍りつく。
 と同時に、全校生徒ほぼ二分の1の殺意が日和の身体をつき刺した。
 ひきつった笑みをうかべて、数歩を下がる。
「へー、そうなんだ」
「へや!?」
 背後からきこえた声に、パッとふりむいて構える。腰が引けているためひたすらに不格好である。
 眼鏡とおさげ。そのふたつがトレードマークの黒髪の少女が、レンズの奥から凍てつくような目で日和を見ていた。
 ヘビににらまれたカエルのごとく硬直する日和。
 ついでに氷点下の北風に吹かれたかのように、その他男子も凍りつく。
「おいしそうなお弁当ね」
「な、なんだよぅ。委員長には関係ないじゃないかよぅ」
 へっぴり腰でかろうじて反抗する日和。
「そーね。関係ないものね」
 南雲美鈴はとおりすぎる際、おもいきり足を踏みつけた。
「いってええええええええ!!」
「あら、ごめんなさい」
 わざとらしくあやまると、おさげを跳ねさせて去っていく。
 負傷した左足をかかえてうめきつづける日和をみて、ゴクリとつばを呑みこむ志村と御堂。
「さすが中国四千年」
「すさまじい破壊力だぜ」
 彼らのなかで、まだその設定は真実であった。




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