「二二拍手 巻之二」

第一話 出会いは突然に

「かまわないと申しました」
「かかわるのはあなただけでは無いのに」
「なにか?」
 ほそおもてに眉ねをよせた香月に、ひとつため息をついてつづける。
「さきの件は゛総社゛へのあきらかなる反逆といえど、家中の手なる事態の収拾には一考の余地ありと判断す」
 すでに半月がすぎた。
 担任である溝口おどろは旧校舎の全壊とともに”失踪”をとげ、かわりにエビス顔の校長がホームルームにおとずれる。旧校舎あとには黄色いテープで柵がされ、立ち入り禁止となっている。
「ありがたく存じます」
 ていねいに頭をさげる香月。
「舞姫様よりお口ぞえいただいたのですね」
「いえ、事実を申しあげたのみです。”総社”がそう判断されたのは、また別の――」
 今度はみすずに目をやり、口をとじる。
「本当に、宿世とは想いどおりにはいかないものだと」
 みすずと日和は顔を見合わせて首をかしげる。
「つづけます。非を認め、罪をあがなうならば贖罪(しょくざい)の道はただ一つ」
 気を落ちつかせようと、あえかは胸に手をあてた。
「……ここにいる、春日日和君と夫婦(めおと)の誓いをせよ、と」




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