「二二拍手 巻之二」

第一話 出会いは突然に

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(ルカ女の制服だ)
 赤いリボンに特徴のある(えり)もと。緋色の生地に白とのコントラストが目をひく。お嬢様学校だから校則は厳しいんだろう。丈の長さも超長い。ノーテンパーのうちの学校とは大ちがい。
 無論、おおくの男は膝上を歓迎こそすれ、否定なぞはしない。それがかなしい男のサガなのだと、志村はオレに向かって力説してくれた。
 しかし、しかしだ。
 むやみに露出が多いというのは、希少価値という観点からみるとどうだろう。男のサガはオレも否定すまい。むしろ夏って季節に感謝したいくらいだね。夏はココロもカラダも薄着になる!
 いや、志村が言ったんだよ志村。オレの友達(ダチ)
 師匠だってあまり露出のおおい服は好まない。というか、ほとんど一日中巫女服着て神社の仕事にいそんでいるわけで、露出しようにも機会がない。巫女服にも半そでなんてモノがあればいいのに無い。
 なぜ無いんだ。
 これは考えねばならぬ重要事項だ。
 どうやって師匠に水着を着せるか。
 まずはワンピースかビキニかが問題だが、大和撫子(なでしこ)という特性上、師匠のガードは予想以上に堅い。いきなり小股の切れあがったビキニを押しつけるなんて()の骨頂。清純さに象徴される白のワンピースからさりげなくすすめ、なおかつ地元のプールでその有効性を存分に知らしめたあと、海だ。
 はるかなる大洋。
 西へ沈む夕日を肩を並べて眺めつつ、オレは手もちのバッグからとっておきのビキニをとりだし、「君へのプレゼントだ」「まぁ、こんな素敵な水着!」「君の美しい肢体に似合うと思って」「ほんとに私にくれるの?」「君以外に似合う女性はいない」「代わりにわたしをもらって!」「いただきます!」
 はっ!?
 意識が飛んでしまったか。
 まったく、暑さのバカヤローだぜ。
 そろそろのぼらねばなるまい。
 苦行という名の階段を。
「……おろ?」
 数段上に人がいる。
 そういえばさっき、ルカ女の子が階段を昇っていったような?
 数段も行かないうちに歩みを止めて、ずっと見てたとか?
 切れ長の涼しい目元。
 光の加減のせいか、藍色(あいいろ)の宝石がゆらめいて、照りつける日差しの中にいるのに、どこか凪いだ湖面を思わせる。
 心地よい風が吹きぬけ、火照(ほて)った身体を醒ますように通りすぎる。



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